大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成3年(ワ)5306号 判決

原告

多比良株式会社

右代表者代表取締役

多比良宗作

斉藤裕

原告

竹内孝仁

右両名訴訟代理人弁護士

太田宗男

古瀬駿介

荒木昭彦

右補佐人弁護士

鈴木一元

被告

フジエース株式会社

右代表者代表取締役

小藤茂樹

右訴訟代理人弁護士

柏木薫

松浦康治

右補佐人弁理士

竹本松司

湯田浩一

主文

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一請求

一被告は、別紙被告装置目録記載の患者用移動介助装置を製造販売してはならない。

二被告は、その本店、営業所及び工場に存する前項記載の装置及びその半完成品(前項記載の装置の構造を具備しているが、いまだに製品として完成に至らないもの)を廃棄し、同装置の製造に必要な金型を除去せよ。

三被告は、原告らに対し、金一一九〇万円及びこれに対する平成三年五月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四被告は、日本経済新聞紙上に、別紙広告目録記載の文案により、標題、原被告の会社名及び代表取締役氏名を二倍活字、その他は1.5倍活字を使用した謝罪広告を一回掲載せよ。

第二事案の概要

一本件は、原告らが、被告に対し、別紙被告装置目録記載の患者用移動介助装置(被告装置)の製造販売の差止め及び損害賠償等を求めたものであるが、原告らは、当初本判決添付の実用新案公報(本件公報)記載の実用新案権(登録日平成二年一一月一四日、登録番号第一八三七六五四号。本件実用新案権)のみに基づき、右請求を行っていたところ、その後、別紙原告製品目録記載の製品(原告製品)の形態が不正競争防止法一条一項一号の周知商品表示であるとして、同条項に基づく請求を予備的に追加してきた事案である。

二争いのない事実

1  原告らが本件実用新案権を共有していること。

2  被告が被告装置を業として製造販売していること。

三争点

1  原告らの不正競争防止法一条一項一号に基づく請求の予備的追加的変更は許されるか。

被告は、原告らの右請求の変更は請求の基礎を全く異にし、また訴訟手続を著しく遅延させるものであるから、許されるべきではないと主張している。

2  被告装置が本件実用新案権に係る考案(本件考案)の技術的範囲に属するか否か。

本件考案の要件のうち、「連結具はベッドのフレームの外側に配設される取付ベースと、フレームの内側に配設される締付板とからなり、取付ベースと締付板とによりフレームを挟持して固定するよう形成し」との要件(連結具取付構造についての要件)及び「取付ベースの表面には支持バー固定用ハンドルを取付け、このハンドルには取付ベースの背面に配設する支持バー固定用片を取付け、取付ベースと支持バー固定用片との間に支持バーの前記ベッド取付部を挿入し、支持バー固定用ハンドルの回転により支持バー固定片が移動し、支持バーを着脱自在に形成し」との要件(支持バー固定構造についての要件)に関する原告及び被告の主張は、次のとおりである。

(一) 連結具取付構造について

(1) 原告の主張

連結具取付構造は、本件考案においては取付ベースと締付板からなるのに対し、被告装置においては取付ベース9、取付金物13、ナット14及び取付ベース固定ボルト15から成り、取付用金具の形状に違いはあるが、ベッドの内外から押圧することによって固定するという基本的な固定方法に差異はないから、両者は作用効果が同一であるというべきである。

また、取付金物自体は中間機構にすぎず、締付板による挟持機構をボルトと代替することは出願当時の技術水準からしても当業者にとっては本件考案から容易に実施することができたものである。従って、被告装置の連結具取付構造は、本件考案のそれと均等である。

(2) 被告の主張

本件考案においては、ベッドフレームの内側に配設される部材は、締付板という板状の形態を備えていなければならず、これと取付ベースとの間にベッドフレームを挟持する構造により、連結具をベッドフレームに取り付けるものであるが、被告装置においては、取付けベース9の下面9cに二つの取付金物挿通孔12、12を設け、ここにU字状の取付金物13、13の一方の脚部を挿通し、他の脚部に固着されたナット14、14に取付ベース固定ボルト15、15をねじ込み、その先端をベッドフレームに押しつけることによって、連結具2をベッドフレームに取り付けるという構造であって、ベッドフレームの内側には本件考案の締付板に相当するものが存在しないから、本件考案とは構成を異にする。

(二) 支持バー固定構造について

(1) 原告の主張

支持バー固定構造は、本件考案においては、支持バー固定用ハンドルの回転により、この支持バー固定用ハンドルに取り付けられた支持バー固定用片が移動し、これにより取付ベースと支持バー固定用片との間に挿入した支持バーが着脱自在になるのに対し、被告装置においては、ブラケット19が取付ベース9に固着してあり、支持バー固定用ハンドル17の回転によりそのハンドルに取り付けられた支持バー固定ボルト18が移動し、これによりブラケット19と支持バー固定ボルト18との間に挿入した支持バー1が着脱自在になるようになっている。このように、被告装置においては本件考案が有する可動性の支持バー固定用片が省略されているという点において具体的構造の差異は認められるが、両者とも支持バー固定用ハンドルの操作によって支持バーが着脱自在になる点においては作用効果が同じであって、両者は、要するに、本件考案では支持バーの全周を面で抱持するのに対し、被告装置では支持バーのおよそ半周を面で抱持し、他の半周を点で支持する点において相違するにすぎない。原告は、本件考案をするに際し、被告装置のように支持バーを面と点で支持する構成を認知していたが、このような構成では支持バーのベッド取付部に一点に外力が集中してひずみを生じ、その結果外力を加えられない危険性があったから、より安全性の高い全周を面で抱持する構成としたものであって、両者の前記構成の差異は自由な選択範囲に属する設計上の微差にすぎないというべきであるし、また被告装置における支持バー固定構造は本件考案における支持バー固定構造と均等である。

被告は、被告装置においては、本件考案では奏しない作用効果を奏するとして、支持バー固定ボルト18の先端の位置が多少ずれたり、ボルトの角度が支持バー1のベッド取付部4に対して正確な垂直でなくても構わないので、精度上正確性が要求されず、製造が容易である旨主張する。

しかしながら、被告装置のような構成では、支持バー固定ボルト18と支持バー1のベッド取付部4との接触面積が正常な状態においてでさえ小さいのであるから、ずらしたり傾斜した状態ではますます接触面積が小さくなり、支持バー1のベッド取付部4の損傷や支持バー固定ボルト18自体の屈曲等の危険性がより増大し、到底有用な作用効果として主張できるものではない。

また被告は、被告装置においては、本件考案では奏しない作用効果を奏するとして、支持バー固定用片を取り付けるための締付ボルトやそのネジ孔を必要とせず、少ない部材で支持バー1のベッド取付部4を確実に固定することができるため極めて構造が簡単でかつ組立てが容易である旨主張する。しかしながら、支持バー固定用片を省略しただけ構造が簡単でかつ組立てが容易になったことは当然であるとしても、その代償として、支持バー1のベッド取付部4の一点に外力が集中するためその部分がひずみ、その結果締め付ける力が十分でなくなる危険性が多分にあるものであって、有用な作用効果として主張できるものではない。

(2) 被告の主張

本件考案の支持バー固定構造についての要件は、

A 取付ベースの表面に支持バー固定用ハンドルを取り付けること、

B 取付ベースの背面には支持バー固定用片が配設され、これが支持バー固定用ハンドルに取り付けられること、

C 取付ベースと支持バー固定用片との間に支持バーのベッド取付部を挿入すること、

D 支持バー固定用ハンドルを回転すると支持バー固定用片が移動すること、

に分けることができるところ、被告装置における支持バー固定構造を右の要件に対応させると、

a 取付ベース9の表面(正面9a)には、支持バー固定用ハンドル17を備えた支持バー固定ボルト18が取り付けられている、

b 取付ベース9の背面(正面の裏面9e)には、ブラケット19が固着されているが、このブラケット19は支持バー固定用ハンドル17や支持バー固定ボルト18には取り付けられていない、

c 取付ベース9の上面9b及び下面9cにそれぞれ設けられた支持バー挿通孔11、11及び取付ベース9の裏面9eに固着された長方形板20と右ブラケット19とにより形成されるU字孔19aに支持バー1のベッド取付部4を挿入する、

d 支持バー固定用ハンドル17を回転すると、支持バー固定ボルト18が回動するのみで、ブラケット19は全く移動しない、

に分けることができるのであって、両者の支持バー固定構造、すなわち支持バーのベッド取付部を取付ベースに固定するための構造は、全く構成を異にする。

被告装置においては、取付ベース9の裏面9eに固着された長方形板20とブラケット19とにより形成されるU字孔19aに支持バー1のベッド取付部4を挿入し、これを支持バー固定ボルト18の先端とブラケット19の内面とにより固定するという構成を採っているため、①支持バー固定ボルト18の先端の位置が多少ずれたり、ボルトの角度が支持バー1のベッド取付部4に対して性格な垂直でなくても構わないので、精度上正確性が要求されず、製造が容易である。②支持バー固定用片を取り付けるための締付ボルトやそのネジ孔を必要とせず、少ない部材で支持バー1のベッド取付部4を確実に固定することができるため極めて構造が簡単でかつ組立てが容易である、という本件考案では奏しない作用効果を奏するものである。

四争点に対する判断

1  争点1について

本件記録によれば、平成三年六月二八日に第一回口頭弁論期日が開かれたが、被告装置をどのように特定するかで数期日を要し、同年一一月二七日の第四回口頭弁論期日にようやく右特定の問題について原被告が合意したこと、その後本件考案と被告装置とを対比した主張が原被告双方からなされるうち、平成四年三月四日の第六回口頭弁論期日において本件は準備手続に付されたこと、平成四年四月二二日の第一回準備手続期日において双方による対比の主張がほぼ完了し、裁判所として権利侵害の有無について判断可能な状態となり、ひいては弁論自体終結可能な状態となったため、準備手続を行う裁判官らにおいて和解を勧試し、続行することとしたこと、ところが、原告らは、平成四年五月二〇日の第二回準備手続期日において、原告多比良株式会社の販売する原告製品の形態が不正競争防止法一条一項一号にいう周知商品表示であるとする請求を予備的に追加する旨を記載した準備書面を提出し、右和解勧試に応じる意思のないことを明らかにしたため、準備手続を行う裁判官らは右和解勧試を打ち切り、準備手続に付するとの決定も取り消されたこと、右準備書面に添付された原告製品に関する図面によると、その形態は本件公報中の図面と異なる形態のものであること、平成四年六月二四日の第七回口頭弁論期日において、原告は多数の書証を提出したが、その中には作成者や、作成年月日が不詳のものもあり、また被告においてもその成立を認めることはなかったこと、また被告は、同期日において、原告の右請求の予備的追加的変更を許さない旨の決定をされたい旨の意見を陳述したこと、以上の事実が明らかである。

そこで検討すると、原告らの当初の請求は、原告らの共有する本件実用新案権に基づくものであるのに対し、後に予備的に追加した請求は原告製品の形態が右原告らの商品表示に該当し、周知性を有することを内容とする不正競争防止法一条一項一号に基づくものであって、両者は、製造販売の差止め等の対象となるものが同一であるから、請求の基礎は同一であると認められるものの、その権利内容を全く異にするため、予備的に追加された請求を審理するためにはかなりの期間を要するものと予測される。すなわち、右請求を審理するに当たっては、まず原告製品がどのような形態のものであるかを特定する必要があるところ、前記のとおり原告製品は本件実用新案権を実施した製品ではなく、その形態は本件公報中の図面のものと異なるものであって、このような原告製品の形態を特定するには被告装置の特定の場合と同様に相当期間を要することは明らかであるし、また右請求の審理においては、原告製品の形態の特異性や周知性、被告装置との誤認混同の発生等の事実の立証が必要であるところ、その立証のためには書証だけでは足りず、証人尋問等を要することも前記事実から明らかである。右のとおり、原告が右請求を予備的に追加することを許すならば、終結可能であった本件訴訟手続が著しく遅延するといわざるをえない。

よって、原告の不正競争防止法一条一項一号に基づく請求の予備的追加的変更は、著しく訴訟手続を遅滞させるものとしてこれを許さないこととする。

2  争点2について

本件明細書の実用新案登録請求の範囲に記載されている本件考案の要件のうち支持バー固定構造についての要件は、「取付ベースの表面には支持バー固定用ハンドルを取付け、このハンドルには取付ベースの背面に配設する支持バー固定用片を取付け、取付ベースと支持バー固定用片との間に支持バーの前記ベッド取付部を挿入し、支持バー固定用ハンドルの回転により支持バー固定片が移動し、支持バーを着脱自在に形成し」というものである。また、別紙被告装置目録によると、被告装置における支持バー固定構造及びその作用は、取付ベース9の正面9aに支持バー固定用ハンドル17を備えた支持バ固定ボルト18が取り付けられ、取付ベース9の裏面9eに断面U字形の金属板のブラケット19が長方形板20とともに固着され、このブラケット19と長方形板20とにより形成されるU字孔19aに支持バー1のベッド取付部4が挿入されること、支持バー固定用ハンドル17で支持バー固定ボルト18を回転させてこれをブラケット19内にねじ込み、右ボルト先端を支持バー1のベッド取付部4に押し付けてこれをブラケット19の内面等に密着させて摩擦力により支持バー1を所定の位置に保持すること、支持バー1の高さを調節したり、取りはずす場合には、支持バー固定用ハンドル17で支持バー固定ボルト18を右とは逆に回転させて右ボルト先端を支持バー1のベッド取付部4から離間させ、ブラケット19の内面等による支持バー1のベッド取付部4に対する押圧を解放することにより行うことが認められる。これによれば、回転することにより取付ベースの内外に移動するという点において、被告装置の「支持バー固定用ハンドル17を備えた支持バー固定ボルト18」が本件考案にいう「支持バー固定用ハンドル」に該当するもと認められ、そうすると被告装置においては、この「支持バー固定用ハンドル17を備えた支持バー固定ボルト18」には、何らの部品も取り付けられていないから、被告装置における支持バー固定構造は、本件考案にいう「支持バー固定用片」(「支持バー固定片」)を欠くものであって、本件考案の支持バー固定構造についての要件を充足しない。

原告は、被告装置と本件考案とのこのような構成の差異は自由な選択範囲に属する設計上の微差にすぎないし、被告装置における支持バー固定構造は本件考案のそれと均等である旨主張するが、被告装置が本件考案の構成に欠くことができない事項として記載した「支持バー固定用片」(「支持バー固定片」)を欠く以上、これをもって自由な選択範囲に属する設計上の微差にすぎないということはできないし、また原告は、前記のとおり「本件考案をするに際し、被告装置のように支持バーを面と点で支持する構成を認知していたが、このような構成では支持バーのベッド取付部の一点に外力が集中してひずみを生じ、その結果外力を加えられない危険性があったから、より安全性の高い全周を面で抱持する構成とした」旨主張しているところ、これは作用効果の異なることを自認したものということができるのみならず、本件考案においては被告装置のような構成を当初から意識的に除外していることを自認したものということもできるのであって、均等の主張はその前提を欠くものであり、原告の右主張は理由がない。

右のとおり、その余の要件について検討するまでもなく、被告装置は本件考案の技術的範囲に属さない。

五以上検討のとおり、原告らの本訴請求は理由がない。

(裁判長裁判官一宮和夫 裁判官足立謙三 裁判官前川高範)

別紙実用新案公報〈省略〉

別紙被告装置目録

イ号図面に示す患者用移動介助装置

一、図面の説明

1 第1図は、ベッドのフレームに取りつけた状態の全体の斜視図

2 第2図は、連結具の拡大斜視図

3 第3図は、連結具の拡大背面斜視図

4 第4図は、連結具の拡大左側断面図

二、符号の説明

1  支持バー

2  連結具

3  把持部

3a、3a 水平部

3b  側部

3c  他側部

4  ベッド取付部

5  脚杆

6  脚支杆

7  脚支杆固定ボルト

8  保護キャップ

9  取付ベース

9a  正面

9b  上面

9c  下面

9d、9d 側面

9e  正面の裏面

10  貫通孔

11、11 支持バー挿通孔

12、12 取付金物挿通孔

13、13 取付金物

14、14 ナット

15、15 取付ベース固定ボルト

15a、15a 六角穴

16、16 嵌合部材

17  支持バー固定用ハンドル

18  支持バー固定ボルト

19  ブラケット

19a U字孔

20  長方形板

21  貫通孔

22  雌ねじ体

A  ベッドのフレーム

三、構造の説明

支持バー1と連結具2からなる患者用移動介助装置である。

支持バー1は、鋼製丸パイプを屈曲した構成で、上部には把持部3が設けてあり、この把持部3は上下二段の水平部3a、3a及び高さ方向に半円状に折曲した側部3bを有しており、側部3bに対向する他側部3cは隅角部を曲線状に形成し、さらに下垂してベッド取付部4を有している。また、下方水平部3aの側部3bに寄った位置からは、ベッド取付部4に平行に脚杆5が下垂してあり、この脚杆5の下端にはさらに鋼製丸パイプによる脚支杆6が挿入してあり、脚杆5の下端に取付けた脚支杆固定ボルト7を緊結することにより高さ調節自在に固定されるよう形成され、脚支杆6の下端には保護キャップ8が取り付けてある。

連結具2は金属製であり、ベッドのフレームAの外側に配設される取付ベース9と、フレームAを挟んで取付ベース9に下方から嵌入される2個のU字形の取付金物13、13と、これらを固定するための2個の取付ベース固定ボルト15、15及び支持バー固定用ハンドル17等からなっている。

取付ベース9は正面9aを横長長方形状に形成し、その中央部には貫通孔10が設けられ、上部及び下部を背面方向に直角に折曲して水平に上面9bと下面9cとを形成し、これら上、下面9b、9cの各中央部に対向的に支持バー挿通孔11、11を穿設してある。また正面9aのの左右側部は背面方向へ斜めに折曲し、さらに折曲して側面9d、9dを形成しており、正面9aの裏面9eの中央部にはブラケット19が長方形板20とともに固着してある。このブラケット19は、断面U字形の金属板で両脚が長方形板20に溶接され、U字孔19aを形成している。長方形板20の中央部には貫通孔21が設けられ、この内部には雌ねじ体22が嵌合されたうえ、その外周が長方形板20の貫通孔21内に溶接されており、雌ねじ体22の一部は取付ベース9の正面9aに設けられた貫通孔10を貫通している。そして、支持バー1のベッド取付部4は、取付時には取付ベース9の上面9bの支持バー挿通孔11、U字孔19a、下面9cの支持バー挿通孔11を挿通している。

取付ベース9の背面の左右両端に近く、上、下面9b、9cの間に四角筒からなる嵌合部材16、16がその端部を溶接して固着されており、取付ベース9の下面9cには嵌合部材16、16内に通じる取付金物挿通孔12、12が穿設されている。

取付金物13、13は、断面円形のU字状湾曲部の一方の脚部が取付ベース9の下面9cに穿設された取付金物挿通孔12、12を通して嵌合部材16、16内に挿脱自在とされ、他方の脚部にはナット14、14が溶接によって固着されており、端面に六角孔15a、15aを有するボルト15、15がそれぞれナット14、14にねじ込まれている。

支持バー固定用ハンドル17を取り付けた支持バー固定ボルト18は、取付ベース9の正面9aから雌ねじ体22にねじ込むことによって取付ベース9に装着されている。

四、作用の説明

運搬及び保管状態において、U字形の取付金物13、13の一方の脚部は、取付ベース9の下面9cに穿設された取付金物挿通孔12、12より嵌合部材16、16内に挿入され、他方の脚部は取付ベース9の両側面9d、9dと対向され、この位置で取付ベース固定ボルト15、15をナット14、14に対して回動してその先端を取付ベース9の両側面9d、9dに当接することにより、取付金物13、13は取付ベース9に仮止めされている。

使用状態において、連結具2は、ベッドの左右いずれかの側縁に設けたフレームAの所要箇所に着脱自在に添接される。

連結具2をベッドのフレームAに取り付ける場合には、まず、取付ベース固定ボルト15、15を回動し、その先端を取付ベース9の側面9d、9dから離間して取付金物13、13の仮止め状態を解消した後、取付ベース9をベッドのフレームAの所要箇所に添接した上、一方の取付金物13の脚部を、取付ベース9の下面9cに穿設された取付金物挿通孔12より嵌合部材16内に挿入し、取付金物13のU字状内側にベッドのフレームAを下方から挟んだ状態にして、六角穴15aに六角レンチを嵌合してナット14に対し取付ベース固定ボルト15を回動することによりこれをベッドのフレームAに押圧し、ベッドのフレームAを取付ベース固定ボルト15の先端と取付ベース9の背面とにより挟持して、取付ベース9をベッドのフレームAに取付ける。次に、他方の取付金物13についても右と同様にして、取付ベース9をベッドのフレームAに確実に固定して取付ける。

その後、取付ベース9の上面9bの支持バー挿通孔11、ブラケット19と長方形板20とにより形成されるU字孔19a、及び取付ベース9の下面9cの支持バー挿通孔11に支持バー1のベッド取付部4を挿通し、取付ベース9の正面9aから雌ねじ体22に支持バー固定用ハンドル17でもって支持バー固定ボルト18をねじ込み、その先端を支持バー1のベッド取付部4に押し付けることにより、これをブラケット19の内面及び上下の支持バー挿通孔11、11の周辺部に密着させ、これらと支持バー固定ボルト18の先端との摩擦力によって支持バー1を所定の位置に保持する。

ベッドのフレームAに固定した支持バー1の高さを調節したり、取り外しをする場合には、支持バー固定用ハンドル17を回転させて支持バー固定ボルト18の先端をベッド取付部4から離間させ、もって、ブラケット19の内面及び上下の支持バー挿通孔11、11の周辺による支持バー1のベッド取付部4に対する押圧を解放すれば、支持バー1は上下に移動でき、あるいは、上方より引き抜くことができる。

連結具2をベッドのフレームAから取り外す場合は、まず一方の取付ベース固定ボルト15の六角穴15aにレンチを嵌合して取付ベース固定ボルト15を回動し、取付ベース固定ボルト15によるベッドのフレームAに対する押圧を解放して取付金物13の一方の脚部を嵌合部材16及び取付ベース9の下面9dの取付金物挿通孔12から引き出し、該脚部を約九〇度回転して再び取付ベース9の下面9cの取付金物挿通孔12と嵌合部材16内に挿入し、取付ベース固定ボルト15を回動してその先端を取付ベース9の側面9dに当接し、この取付金物13を取付ベース9に仮止めする。次に、他方の取付金物13も同様にして取付ベース9と共にベッドのフレームAから取外した後、取付金物13を一方の取付金物13と同様に仮止めして保管又は運搬する。

別紙広告目録

謝罪広告

当社が、平成元年三月以降、患者用移動介助装置を製造販売したことにより、貴社が有する実用新案権(登録一八三七六五四号)を侵害し、このため貴社の名誉、信用を害し多大の迷惑損害をおかけしたことをここに謝罪致します。

平成三年四月二六日

愛媛県松山市小栗一丁目六番二六号

フジエース株式会社

代表取締役 小藤茂樹

東京都豊島区池袋四丁目一番三号

多比良株式会社 御中

東京都保谷市泉町四丁目七番二号

竹内孝仁殿

別紙原告製品目録

左記名称および構成の患者用移動介助装置

名称 「移動用バー」

構成 a 添付図面のとおり、連結具(1)を介してベッドのフレーム(2)に着脱自在に取り付けられるもので、ベッドに対して平行から九〇度の適宜角度に配置できるようになっている。

b 鋼製丸パイプを屈曲したもので、上部には倒立U字状に形成した把持部(3)が設けてある。把持部(3)は上下二段の水平部(4)・(5)が半円弧状の一側部によって一体的に連続した形状からなっている。該把持部の幅寸法は五一五㍉。高さ寸法は二三〇㍉となっている。

上部水平部(4)における他側部を屈曲し中間部(6)において下部水平部(5)の他側部と直交して垂直方向に延設し、さらにその下端には細めの鋼製丸パイプ(7)を嵌着して垂直方向のベッド取付部としている。なお、把持部上端(4)からベッド取付部の下端(8)までの高さ寸法は七三〇㍉となっている。

下部水平部(5)の一側部寄りからは、脚杆(9)が下垂してあり、脚杆(9)の下端には細めの鋼製パイプによる脚支杆(10)が高さ寸法調節自在に挿嵌してあり、その下端には保護キャップ(11)を取り付けてある。該脚支杆(10)は脚杆の下端に取付けた高さ調節用のボルト(12)によって固定されるようになっている。

なお、脚杆(9)の高さ寸法は五〇〇㍉となっており、脚支杆(10)は七八〇㍉から一一八〇㍉の間で高さ調節できるようになっている。

以上のような構成からなっているので、全体的には、正面視においてR字状に形成されている。

c 連結具(1)は、二本のU字状取付金物(13)によりベッドフレーム(2)への着脱および左右移動が自在である。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例